おばさん、それは虹。
「そこのおばさんがね、教えてくれた」
私に道をたずねた小学生が、ぺこりと頭をさげ礼を言ったあと、少し先をいく同級生たちに駆け寄ってそう言った。
「おばさん」
声変わりを経ていない男子小学生の声は澄んでいてどこまでも響き、否応なしに私の鼓膜を震わせた。
彼らが去ったあともその言葉は私の頭の中で鳴り続けた。
おばさん、という衝撃。
ああ、私はもう彼らから見るとおばさんなのだ。
その事実をようやく受け入れた頃、一体おばさんはいつやってきて、いつ去って行くのだろうと考えた。
なぜなら私はおばさんではないからだ。
23歳、おばさんというにはさすがに若すぎる。
でも私自身、中高生のとき教育実習にきていた大学生におばさんと言った覚えがある。彼女たちは今の私よりもさらに若い。
大学生だった頃の私は、アラサー以上の年齢の女性はおばさんだと思っていた。今は30後半以上の女性をおばさんだと思っている。
でもいつからか女性はおばあさんになるよなぁ。
いつか。いつの日か。自分の中のおばさんと、自分自身が重なる時がくるんだろうか。
それとも、おばさんはいつまでも、ここからは届かない存在でありつづけるんだろうか。