キラキラ
ふと我に返ると、自分がどうやって呼吸をしていたのかさえわからなくなる瞬間がある。
溜まっていくキラキラした家具を野晒しの土の上にならべて、何度話しかけても同じことしか言わないどうぶつたちに虫の入った袋を渡す。
どうぶつたちは全員を把握できるくらいの数しかいないのに、両手で足りるほどの種類の個性しかもたない。
私たちは一体何のためにキラキラしたものを集めているのだろうか。
今年の流行語大賞は「インスタ映え」と「忖度」に決まったらしい。
SNSの普及に伴って、私たちは遠いところに住む近い感覚の人たちと簡単につながることができるようになった。
そして、尊重すべき個性なんて数種類しかなくて
「多様性」と言いながら自分もなんらかのジャンルの中にしかいなくて、
かけがえのない私なんていうのは半径1メートルにおさまってしまうことに気付くことになった。
広いところに行けばいくほど自分のしようもなさを思い知る。
美味しくて可愛いケーキを最新のスマートフォンで撮って淡いフィルターで取り繕っても、添える言葉は変わり映えのしない、どうぶつたちとなんら変わりない。
それでも、目の前で「これが欲しい」と言われると動くしかない。
りんごを拾う理由なんて最初からそれだけだ。
最初は必死でかき集めていたキラキラの輝きが鈍っていく。
平穏はその先にあるのかもしれない。